2011年12月22日木曜日

クリスマスプレゼント(11.12.22)

 あちこちで綺麗なイルミネーションが、クリスマス気分を盛り上げています。子どもたちにとっても、1年のうちで最も楽しい時期なのかもしれません。




 「12月24日・25日にサンタの格好をした従業員が、お子様へクリスマスプレゼントをお届けしますので、ご希望の方はプレゼントをお持ち込みください!」

 毎月、自宅に届く手づくりニュースレターに書かれていたメッセージです。発信者は近所のA新聞販売店。
 新聞販売店は新聞を配達するだけの仕事と思っていましたが、この販売店は驚くほど安価なスキーツアーや潮干狩りなど、家族が楽しめるイベントを企画したり、毎月、プロスポーツ観戦、観劇、温泉利用券など20種類を超えるチケットプレゼントを行うなど、そのサービスの充実ぶりには感心します。
 確かに地域を知り尽くした販売店ならではのサービスと言えるのでしょうが、サンタ衣装に身を包んだスタッフがプレゼントサービスを行うという趣向には、いささか驚かされました。しかも、エリア別に決まっている担当者では顔がわかってしまうかもしれないので、担当者をシャッフルするという気の配りようです。

 我が子の喜ぶ顔を想像しながら、両親が吟味した選りすぐりのプレゼントを、サンタから受け取る子どもたちのワクワク感はいかほどのものでしょう。想像するだけで、こちらもワクワクしてきます。
 心温まるクリスマス企画であり、サービスについても考えさせてくれた嬉しいクリスマスメッセージでもありました。

2011年11月21日月曜日

ボクサーの呼吸法(11.11.21)

 某ボクシングジムの会長に依頼され、プロボクサー(当時世界ランカー)のコンデ ィショニングのアドバイスを行った時のことです。
 ジムのリングでシャドーボクシングが始まり、その動きをじっと見つめていました。 すると、その選手の口から妙な音が聞こえてきました。


パンチを出すタイミングで「ハー」と少し情けないような声を出しているのです。 カンフー映画のような「ハッ、ハッ」という力強い音ではありません。「シュツ、シ ュツ」と息を吐きながらのパンチでもありません。「ハー」と力ない声とともにパンチ を繰り出しているのです。パンチという勇ましい動作には似合わない「ハー」という音 の組合せ。これにはいささか驚きました。

イラスト提供=M/Y/D/S イラスト素材百科。転載不可。

 2時間ほどの練習を終え、コンディショニング指導をしながら、ゆっくり話をしまし た。「ハ―」の理由は、メキシコ遠征時に、メキシカンボクサーがしているのを真似た ところ、いい感じだったので、それ以来続けているとのこと。

 帰り道で「なぜ、“シュツ”ではなく、“ハー”なんだろう」と考えました。実際に声を出 しながら比較してみました。すると腹部の緊張の仕方が両者では異なっていることに気 づきました。筋電図で測定したわけではありませんが、「ハー」の呼気法では腹部の深 層筋がより使われているような感覚があります。
 「ハー」と息を吐き続けると、「シュー」と強く息を吐き続けることでは起こらない 腹部のドローイン(お腹の凹み運動)が起こります。「ハー」の呼気動作で体幹部(コ ア)をより安定させ、有効なパンチにつなげているのかも知れない、というのがその時 考えた理屈です。

 アスリートは身体感覚が優れており、「いい感じ」の動作には敏感で、それを取り入 れることは自然なことです。理屈は後作業なので、感覚が優先されますが、理にかな っていることも多いのでしょう。

2011年10月9日日曜日

ヒザ痛者はなぜ階段を横向きに下りるのか?(11.10.09)

 40歳以上の日本人の63%がヒザに痛みを抱えているという調査報告があります。そしてその半数以上は「階段の上り下りがつらい」と答えています(2007,科研製薬,生化学工業)。健康のためには運動が必要といわれても体重を支えるヒザに痛みがあれば運動どころではないかもしれません。

 さて、駅の階段を横向き(カニ歩き)で下りていく人を見かけることがあります。恐らく、前を向いて下りる通常の動作ではヒザが痛いということなのでしょう。
 ではどうして、横向きに下りるとヒザが楽なのでしょうか?
 先ずわかるのは、手すりにつかまりながら下りるので、転倒の危険性が減るということです。また、手で支えているので当然ヒザへの負担も軽減されます。さらに良く動作を観察すると、「横向き下り」と、「前向き下り」では下半身の使い方が大きく異なることがわかります。


 前向きで下りるときは、股関節があまり曲がらず、主にヒザ関節で体重を受ける動作になりがちです。ところが横向き動作では股関節も大きく動きます(写真)。股関節の大きな筋肉が活動し、ヒザ関節との協調動作が起こるので、ヒザへの負担は大きく減少することになります。
 階段の上りより、下りの方がつらいという方が多いようです。これは上りでは股関節の動きが大きいのに対して、下りではかなり小さくなってしまうこととも関係しているでしょう。
 股関節をうまく使えれば前向きに下りるときでもヒザへの負担を軽くできる可能性を示しています。

2011年9月15日木曜日

足裏からの情報(11.09.15)

 二つの体重計を足元に置き、左右の足をそれぞれの体重計に乗せて測ると、左右にかかる体重が大きく異なる人が少なくありません。
 直立して、左手を腰にまわして左の背筋をギュッと押えます。そのまま右足に体重をかけると左の背筋が強く緊張していることがわかります(写真)。


【右足に体重をかけると左背筋が緊張する】 

 次に左足に体重を移すと、左背筋はフニャっとゆるむのがわかります。右に体重を乗せると左背筋が緊張し、逆に、左に体重を乗せると右背筋が緊張し、左側がゆるみます。

 今度は両手を腰にまわし左右の背筋を同時に押えたまま、つま先側に体重を移すと、左右の背筋が緊張するのがわかりますが、カカトに体重を移すと左右の背筋はいきなり柔らかくなります。カカト体重では、背筋の緊張はゆるみますが、反対に腿の前や腹筋など前側の筋肉は緊張しやすくなります。また、片側の足裏外側に体重が乗り、もう一方が足裏内側に乗るような非対称のケースでは、体はねじれます。

 上記の実験からも想像できると思いますが、足裏荷重が不均等の場合、特定の筋肉が過剰に緊張していることが考えられます。このような場合、股関節や骨盤周囲の筋肉バランスを上手に整えると、足裏にかかる重さの感じもフラットなバランスに変わってきます。

2011年8月1日月曜日

闘魂注入ビンタ(11.08.01)

 闘魂注入というセレモニーをご存知でしょうか?あのアントニオ猪木氏がビンタで気合をいれる儀式のことです。ビンタをもらった人は、一様に「ありがとうございます」と応えます。奇妙な光景ですが、ファンにとってはこたえられないのでしょう。
 さて、猪木氏はビンタを行う前に、ある行為を行っているのですがお気づきでしょうか?
 右手のひらで、相手の左頬を叩くのですが、右手をスイングさせる直前に、左の拳骨で相手のお腹を軽く叩いています。その後に、大きな手が飛んでくるというスタイルがパターン化されています。


 ではなぜ、左手でポンポンとお腹を叩いているのでしょうか?実は、お腹を叩かれると、防御反応として腹筋群が緊張し、お腹が少し凹みます。腹部の深層筋群が働き、腹圧も上昇し、体の安定装置(スタビライザー)にスイッチが入ります。
 これにより体軸が安定し、顔を叩かれた衝撃で首を痛めるなどの障害を予防する効果が期待されます。恐らく猪木氏も経験則から、そのようなことを考慮して行っているのではないでしょうか。
 床から重い物を持ち上げるときなども、呼気に合わせ、お腹を凹ませた状態をキープしながら行うと、腰部にコルセットを装着したようにコアスタビライザーが働き、効果的な腰痛予防対策となります。

2011年7月9日土曜日

いつか行く道(11.07.09)

 私には現在90歳になる父がいますが、母は78歳で亡くなりました。70歳を過ぎたころでしょうか、母は何度か、「お前にはわからないだろうが」と前置きしながら、老いていく苦しみについて私に訴えたことがあります。
 誰もが、いつか行く道ではありますが、そこへ到達していない身に、それを実感せよというのは無理な話です。いつか来た道はわかっても、いつか行く道については、現実感が乏しくなるのは仕方のないことでしょう。
 もし、老いや老いから生ずる不幸を嘲笑う人がいたとしても、その人もいつかは同じような道を辿り老いていくという厳然たる現実があるのです。

 日本の高齢者人口は23%を超え、世界で類を見ない超高齢化社会に向かっています。4人に一人が高齢者になる時期も近いと話題になりますが、地方では既に30%に近づいている町もあります。
 高齢になり、死にいたる道はすべての人に平等に与えられた道、いつか行く道です。それは誰もが知っている理屈です。この事実から目を反らすことなく向き合うことがとても大切なことのように思います。
 高齢者はその生きざまをもって、私たちに様々なメッセージを残しているのではないでしょうか。それは、「あなたの将来の姿ですよ」と言っているかもしれないし、反面教師としてのメッセージなのかもしれません。

2011年6月5日日曜日

運動習慣者は約30%(11.06.05)


 健康づくりに運動が欠かせないことを知らない人はいません。しかし、運動習慣を持っている人の割合は約3割で、持っていない人が約7割います。
 2008年の国民健康・栄養調査資料によると、20歳以上で1回30分以上の運動を週2日以上実施し、1年以上継続している人の割合は、男性33.3%、女性27.5%となっています。年代別でみると20代は男性22.7%、女性16.5%。30代は男性18.5%、女性11.6%で、働き盛りの人の運動実施率が低く、60代では、男性38.3%、女性41.2%で、高齢者の方が運動を習慣にしている人が多い傾向があります。

運動習慣者の割合 
運動習慣者の割合

*運動習慣者=20歳以上で1回30分以上の運動を週2日以上実施し、1年以上継続している者 
(2008年度厚生労働省資料より著者作図)


 厚生労働省は、「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」という標語を掲げ、運動の習慣化を呼びかけています。また、2006年には生活習慣病予防のための具体的な運動実践マニュアルともいえる「エクササイズガイド2006」を発表しました。
 厚労省のホームページにアクセスすれば、簡単に見ることができますが、このエクササイズガイドの認知率が1.4%という報告もあり、良いコンテンツを作ったものの、実はほとんど知られていないという寂しい実態があります。

2011年5月1日日曜日

正しい歩き方?(11.05.01)


歩き方 TVや雑誌などで「正しい歩き方」の解説を見聞きすることがあります。「美しい歩き方」という表現ならば理解できるのですが、「正しい」と断言できる根拠は一体何だろうと、常々疑問を持っています。

 正しい歩き方を教えて欲しいといわれることがありますが、「一般的に正しいといわれる歩き方は、こういう歩き方です」と紹介はしても、これが、「正しい歩き方です」と説明したたことは一度もありません。何が正しいのかが、私にもよくわからないからです。

 「カラダの局所に負担をかけない、こんな歩き方もあります。正しいとされる歩き方と、実際に歩いた感覚で違いを比べてください」と声をかけます。「どちらが正しくて、どちらが間違っているということではなく、カラダで感じながら自分に合う歩き方を見つけましょう」と話しています。

 慢性腰痛や膝痛を抱えている人などは、歩き方を変えるだけで、負担感が減少することがよくあります。局所への負担が少なく楽に行える快適な動作が、その人にとって、よりよい歩き方ではないでしょうか。

2011年4月10日日曜日

あたりまえのこと(11.04.10)


腰のねじれ  ヒトは、この世に生れて1年かけて「立つ、歩く」技術を習得します。一端、この技術を身につけた後は、意識して行うことはなくなります。
 ほとんどの日常動作は無意識的に行われますが、思うように動かせない体になれば、当然、不自由な生活を強いられます。杖や車イス、あるいは人による介助など、依存度が大きくなるほど、生活行動も大きく制限されていくことになります。

 今回の大震災でもそうですが、安全な水・空気・食物、電気、家、家族や友人など、あたりまえに存在していたものを失ってしまった時、あたりまえの事や物がどれほど大切であったのかに、気づきます。

 自由に動き回れる体の機能が損なわれた時、「立ち、座り、歩く」という日常の動作が何不自由なく、自力でできることのありがたさを痛感することになるのでしょう。

 けれども悲しいかな、ヒトは、あたりまえの事や物が、あたりまえに存在し続ける限り、そのありがたさや尊さに気づかないもの。

 失って初めて気づく、日常のありがたさ。
 「時、既に遅し」とならないように戒めて行動したいもの。
 しかし、これが、とてつもなく難しい。

2011年3月10日木曜日

腰のねじれ(11.03.10)

 両脚を揃えてイスに座っているところを、上から見ると、右よりも左側のヒザの方が前方に出ていることがわかります。このような左右差は多くの人に見られます。


腰のねじれ  この左右の差は、いったい何を意味しているのでしょうか。左脚が長く、右脚が短いのでしょうか?写真の例では、左のヒザが前に出ていますが、これは、右側に比べ、左側の腰が前に出ていること、つまり、右回旋方向に腰が捻じれている可能性を示しています。

 写真のような例では、立って体をひねった時も、右に捻りやすく、左には捻りにくいという回旋動作の左右差が多く見られます。この原因としては、様々なことが考えられますが、日常の歩行動作との関係も大きいのではないかと思います。

 例えば右足の接地時間が左側より長い場合は、左足は右足よりも遠くへ運ばれることになり、骨盤も右回旋優位となり、右回旋方向への捻じりが強調されたアンバランスへとつながっていく可能性が考えられます。

【セミナーのお知らせ】

 4月1日より毎週金曜日10:30~12:00で全4回という日程で、「ゆるみ筋&こわばり筋のコンディショニング」をテーマにセミナーを行います。身体のバランスを調える“操体法”の実技を中心に行う予定です。操体法が初めてという方には特にお勧めです。

 会場:実践女子学園生涯学習センター(JR日野駅前)

 詳細については以下をご参照ください。
http://www.syogai.jissen.ac.jp/products/detail.php?product_id=277

2011年2月14日月曜日

姿勢づくりの方法 ~セルフチェック~(11.02.14)

 より良い姿勢をつくるためには、硬くなっている筋肉を柔らかくしたり、弱くなっている筋肉を強化するなどの取り組みが欠かせません。

 同時に、普段から姿勢を意識することも大切です。但し、「気をつけ」のように背中を緊張させるような姿勢はお勧めできません。あくまで、無理のない自然体が理想なので、頑張って姿勢を維持するという方法では長続きしません。
 一方で、意識して自然体をつくるというのも不自然なことです。あくまでも、プロセスとして無理のない範囲で意識化し、最終的には無意識でも、ニュートラルな(本来のあるべき)姿勢が確保できていることが理想でしょう。



  1.左右の足裏に同じように体重が乗っていますか。
 2.足裏にかかる重さは、つま先側や踵側に傾くことなく、
  足裏全体に乗っていますか。
 3.腰は立っていますか。
 4.腰の上に真っ直ぐ胴体が乗っていますか。
 5.胴体の上に頭が真っ直ぐ乗っていますか。
足裏
 このような内容を自問自答するだけでも
姿勢が変わってきます。

2011年1月13日木曜日

一側性トレーニングの効果(11.01.13)

 スクワットのように両脚同時の対称的な動きを両側性(りょうそくせい)動作といいます。一方、片脚で行うスクワットやボールを投げる、蹴るなど、片腕あるいは片脚による動きを一側性(いっそくせい)動作といいます。
 歩行動作では、片側の股関節の屈曲時には、もう一方は伸展動作を行っています。左右半身が交互に同様の動作を繰り返しますが、これも一側性動作です。
 平泳ぎやバタフライは両側性動作ですが、日常動作やスポーツ動作全般を見ると、一側性動作の方が多いことがわかります。
 スポーツジムでは、両側性動作を想定したトレーニングマシンを主体に設置されていることが多いようですが、スポーツ強化トレーニングでは、競技の特異的動作を意識した一側性トレーニングが盛んに行われています。

ダンベルトレーニング

 さて、NSCAジャーナル2009年9月号に、一側性動作は両側性動作よりも大きな力が発揮されるという報告があります。筋力発揮は、高速動作であるほど、一側性動作で優位に現れ、両側性動作では筋力発揮が低下するという検証データと、両側性トレーニングよりも一側性トレーニングの方が筋力や筋パワーの向上率が高いというデータが示されています。 
 一側性動作では、運動単位の動員率が高くなり、特に速筋線維の動員率が高くなるという研究報告もあります。

 遅筋よりも速筋の方が、加齢に伴う筋力低下が大きいことが知られていますが、高齢者の動作が緩慢であることや、速筋がより使われる階段の下り動作で転倒が多いことなども、加齢に伴う速筋線維の委縮が関係しているという見方があります。
 転倒しそうな局面から素早く姿勢を立て直すときには、速筋が活動することを考えても、高齢者のトレーニングで、速筋を鍛えることには、大きな意味があると考えられます。 (もちろん、姿勢保持や動作の安定を担う遅筋も大切であることはいうまでもありません)
 「一側性動作」というキワードは、高齢者の運動プログラムを考える上で大いに参考になるのではないでしょうか。